以前友人と話していたところ、「ファッションと音楽は凄い密接でとても大事」という珍妙な説を唱える輩が結構いるけれども、それってなんかおかしくねえか、という話で意見が合致した。この話は珍妙すぎてヤバイ。確かに一時代を築いたロックスターとかそういう連中のファッションが注目されるのは仕方無いと思うんだけど、別に音楽の素晴らしさと服装なんて全然関係ないじゃん。

 

勝てば官軍という言葉もあるくらいで、どうしようも無いダサいファッションセンスの奴の音楽が売れてしまったらきっと世界中のオシャレキッズどもは考えを改めて、ああ、自分のセンスは間違えていた、これからはケミカルウォッシュのジーンズにピンクのバンダナ、肩で袖を破いたGジャンを裸に羽織らなきゃいけねえ、みたいになっちゃうんだろうか。どうだろうか。それともまぶたの上に目でも書くつもりだろうか。どの道ファッションなど音楽と違い10年も経てばほとんどが黒歴史だ。未だにグレース・ジョーンズのような肩のスーツを着て街を歩くのはただの罰ゲームでしかない。

 

「ファッションと音楽は凄い密接でとても大事」説をきちんと考えると、「音楽を聴いてもらう為の道筋として、エンターテイナーとしてしっかりやろうよ」という話なのかもしれない。悪くない。けれども「ダサい服装の奴の音楽なんて聞くに値しない」という発想ならそれはとんでも無い間違いだ。

 

大抵この「ファッションと音楽は凄い密接でとても大事」説をごり押す輩というのはファッション関係の職業の奴がたまたまDJやバンドなんかやってますというケース、あるいは自分の服装に自信が有りそうな奴が提唱している気がする。その人はそう信じているんだろうし世論はその方向に傾倒しているのでは無いかとも思う。今にも黄色い嬌声が聞こえてきそうだよね。逆に服装が無頓着すぎる音楽好きなんかがこぎれいな格好をした連中にあーだこーだあいつは解ってないみたいな感じで、聞きもせずにぶつくさ言うのも見ていて実際気分が良いものでは無いが。

 

冷静に思うのは「ファッションはファッション」で「音楽は音楽」という事なんだと思う。なんでとてもオシャレな奴の音楽がとてもカッコいい事もあると思うし、服装ダサくてもかっこいい音楽をやる奴がいると思うし、反対もあるよね、という事だ。だってデザインがトテモ素晴らしいスピーカーから糞な音が聞こえてきたら自分はジミー・ペイジよろしくホテルの窓からそいつをぶん投げてしまう様な気がする。ごめん、しないけど。人に当たったら危ないし。

 

別にオシャレすぎるという理由で断罪される必要は無いと思うけど、全然関係ないものを一緒くたにして、根拠も無い風説を打ち立てて音楽の世界の価値観をぐちゃぐちゃにしてしまうのはどうしようもないと思う。事実レコード買いすぎて服装なんかに気が回んない、凄くかっこいいプレイをするDJとかいると思うんだけど。まあ金回り良すぎて服装にもこってて音楽に対して深い理解が有るやつも中にはいるだろうし別にいいんだけど。

 

まあ結論として「ファッションと音楽は凄い密接でとても大事」という説は一種の脅迫だし、ともすれば聴いている音楽で所属表明がもしかしたら可能なのかもしれないような感じで音楽すらアクセサリー的なのかもしれない。もう何年も目を通していないけどファッション誌にはディスクレビューのコーナーがついているし、もしかしたらそういう所で勘違いが始まっているのかもしれない。それはとてもハイプなやり口だと思ってるけど。

 

ただ人気者になりたいだけならファッションを気にしまくって似たようなオシャレムードの音楽でもたしなめばいいんじゃないだろうか。そんで自分達は文化程度高いし、というような自意識をコミュニティー内で増幅させまくってアイデンティティーを守れば良いのだし。とりあえずモテを狙ってセックスでもしまくっていれば一先ずそれなりに生ぬるい幸福な人生を歩む事は可能だと思う。ハイプな世界にスポイルされてみればいいんじゃないだろうか。欲望は適うし。

 

ただ自分としては非常に楽しみがいの有る世界において他人の目を気にして安全な範囲で文化的に振舞うちゅうのは退屈極まりないし残念な事だと思うんだけど。誰かさんが思い切ったら世の中とても楽しくなるかもしれない。ジョブスが死んでからみんな大好きな言葉「イノベーション」なんつうのはぬるぬるでありきたりな場所からは生まれ得ないでしょう。

 

この話、自分としては「別に双方に依存関係は無い」という事に尽きる。別にどっちに凝ろうと悪くないんだけど、取りあえず音楽好きとしては中途半端で後味悪い音楽観みたいなのを押し付けてさえこなければ別にどうでも良い。ただ服装がダサイからという理由である人の音楽に対して否定的な人が居る場合は見ずに聴け、とだけ言いたい。

 

何かハイプで文化的な後ろ盾がなければ「良い・悪い」の主張が出来ないような状況は芸術の世界においてとんでもなく不健康だよね。えーと、例えば藤原ヒロシが良いって言ってたから良いに決まってる!とかさ、恥ずかしくて死にそうだよね。

 

なんども言うけど別にファッションを楽しむ事は悪い事では無いし、服装がどうでも良くなるくらい音楽とか好きな事に打ち込むのも悪い事じゃない。ただ音楽は耳で聴くものだ、と言いたいのです。

 

ちなみにそれでもファッションと音楽がうんちゃら、というのであれば、是非ともレディー・ガガやエレクトリック期のマイルスや、小林幸子みたいな感じで突き抜けてみて頂きたい。